愛車CB750Fボルドール2の再起記録  vol 183

【TLさんの再起記録(4)】
 さて・・今回は難所の「リアショックの整備」である。
TL125をレストアする中でハードルが高いのはこの部分だろう。
何しろ車体の特性からショックアブソーバーは「長くて、柔らかい」という独特のもので代替えが効かない。
他車の代用は出来ないので、どうしても社外で適当な物を見つける事になるけど・・どうも微妙なようだ。

 そこでショックアブソーバーを分解して内部のオイルシールを交換する事になる。
そのやり方やヒントはネット上にたくさん転がっているので目を皿のようにして見つけていく。
(オレのこの記事も誰かのTLのレストアの助けになるだろうと思って書いている。) 

苦労して組み上がったリアショック。
 

 最初に注意事項として「これができるのは完全にガスが抜けたショックだけ」という事である。
内部にガスが残っているショックは分解は出来ないし、分解するのは危険なので諦めよ!

 では作業開始、最初にスプリングを外しエンドアイの固定ナットを緩めてエンドアイを回して外す。
スプリングやレートダイアル等を外してショックユニットのボトム部分のキャップを外す。
外し方は100均などにある小さな「タガネ(チゼル)」をキャップとボトムケースの接合部に合わせてロッド側に叩く。
強くたたくとボトムケースが歪むので、周囲をコツコツ叩いていくと簡単に外れる。。

 次にシールユニットを外すのだが、やり方はボトムケース内のシールユニット縁を叩いて押し下げる。
これを押し下げると、スナップリングが現れるので、下に押し込むように隙間を作り外す。・・
文字で書くと、とても簡単なのだが、手強いのはスナップリングでコツをつかむまで外れない。
ちなみにシールユニットを叩いても下がらない場合は「ガスが残っている」可能性が高いので諦めよ。
シールユニットのスナップリングが外れたらエンドアイを再び仮に取り付けて引っ張ると分解できる。

 
 
ショックが分解された状態。 真ん中のものがシールユニットだ。
   

 と・・ここまでは、他のWEB情報もあるので、多くの人がサクサクと鼻歌で進んできたと思う。
この先からは、あまり見る事はないだろうから想像で補完しながら見てほしい。(笑)

 シールユニットをロッドから抜く、次にユニット内周に沿って細いスナップリングが入っている。(これが根性悪い)
先のボトムケースにシールユニットを固定するスナップリングも外しにくいが、これは更に外しにくい。
オレは二度と外すつもりはないのでかなり強引にピッキング工具で抜いたがかなり時間が掛かった。(ムカつく)

 さて・・オイルシールですが、本来は「摺動用」のシールを使うのが本来ですが、残念ながらありません。
オイルシールのサイズは「10-20-5(内径10ミリ・外径20ミリ・厚み5ミリ)」というものです。
私が選定したのはJISタイプ4でNOKならTC・KOYOならMHSA・ARSならSD・TOYOならTO)というものです。
その中でパッキン屋さんに恐る恐る相談してみたら・・ありました! 手元に来たのはTOYOのTO10205.というタイプ。
もちろん「2枚ください」なんてことはしません。(相手は業者です)・・でも10枚だけ送っていただきました。
価格は一枚160円でしたので、オークションなどで買うよりもずっと安いですね。
ただし、繰り返しますが販売店は専門業者なので失礼のないように注文したほうが良いです。 

   
古いシールを丁寧に外す。 きれいに抜けました。
   

 で、作業ですが・・まず、古いシールを丁寧に抉って外します。(出来るだけ円状態で外します。)
次に、シールにオイルを塗って圧入します・・ある程度までは押し込めば入りますが、押せなくなったら
プラスチックハンマーで静かに叩き、最後に外したシールを上に乗せて叩いて完全に挿入します。
というわけで・・出来るだけきれいな状態でシールを外したかったのはこのためでした。

 シールが完全に平坦に入ったのを確認してシール固定のリングを被せて、スナップリングを戻します。
ここでオレは・・
「このシールが専用部品ではないので、耐久性が低いと考えた。」
「次回のシール交換で細いスナップリングを外す自信が無かった。」
そこで、ここのスナップリングを市販のものに交換した。(オレは28ミリ用のスナップリングを使用した)
こうしておけば、シール交換で指先を傷つけたり興奮したりせずに済みそうだ・・うへへ。
ちなみにスナップリングに交換するばあいはリングの縁に少しヤスリを掛けたほうが良い。
組み上がったらロッドにオイルを塗って静かに入れて・・出来上がり、一件落着!

   
   
シールを圧入していく。 最後は叩いて入れる事になる。
   
 
シール固定リングを入れる。 28ミリ穴用スナップリングに交換だ!
   
 
出来やした・・次回交換は楽々。 ロッドに組付けた状態。
   

 さて、TLのショックを分解整備しようと「ここ」を見た方が最も知りたいのは・・
「ショックに入れるオイル量はいくつだ? 教えろ!」・・でしょう。(笑)    ズバリ!125cc±5ccです。
疑り深い方も居ると思うので、計測から始めます。
(この記事を書いているときは、すでに車体に組まれて実走行で試されてた後ですので・・125cc±5ccで決まりです。)

 まず、ボトムケース内部に沈む「スライダーとロッドの容積」を測ります。(23cc)
次に内部のスライダーの移動量からスライダーが必要とする最低オイル量を計算します。
この内径は33ミリでストロークは150ミリなので、128ccを最低必要とすることが分かります。
上で計測したスライダーロッドの容積は23ccなので128-23=105ccが絶対最低オイル量となります。
これに「ショックユニットが斜めになった時にオイル抜けが起きない為に安全を見込んで5ccを加え110cc。
このようにして計算から110ccを導いて、トライすることにしました。
オレはトライアル車という事で柔らかいショックにするため、手持ちのカヤバのG10を入れました。
本当は「手元で余っていた柔らかいオイルはこれしかなかった」のも理由である。(笑)

 すると、110ccでは押し切った時に「ガスッ!」と抜けが生じてしまいました。
そこで更に10ccを加えて120ccとして押したり引いたりを繰り返しました・・が今度は問題なし。
オイル量が少ないとショックが押し切った時に抜けが生じてしまう、逆に多いと押し切った時にシールから漏れてしまう。
ショックの性格上バンプラバーがあるので、それ以上はロッドが押される事はないので120ccで問題はないでしょう。
その後、ショックを吊って数日間、押したり引いたりしてオイル漏れを確認したところ、特に支障はなし。

スライダーとロッドの容積を計測。 23ccでした。
   
計測から110cc入れてみるが・・押し切って抜ける。 120ccまで増やすと・・OKでした。
 
シールユニットを固定する。 ショックアブソーバー復活です。
   

 この作業をやってみて分かったのは・・慣れないと面倒だけど、情報さえあればスキルは低いという事だ。
先行して分解記事を掲載してくれたホームページがあった事はとても助かった。(ありがとう)
次回はショックは少しオイル漏れが起きないか確認するため、しばらくの間は部屋で吊るして押したり引いたりする。
その間にオイル交換と右クランクケースを開けてオイルポンプローターの清掃などを行う。
TL125の整備も佳境を過ぎて少しづつ進んできたぞ、走行する日はもうすぐだ!

 
2019年07月18日
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